今回はレスリング選手が試合中に着ているユニフォーム(ウェア)のお話です。
シングレットとは
レスリングの選手が試合中に来ているあの、ユニフォーム(競技服、ウェア)。
オリンピック中継などでご覧になった方も多いと思います。
あれは「シングレット」と言います。
つなぎ状のワンピース構造になっているので「シングル」から派生した名前です。
値段は1万円くらい
さておいくら位するのかというと
アディダスとかアシックスなどの有名スポーツメーカのものは1万円前後。
オーダータイプだとさらに高くなって1万5千円前後です。
ノーブランド品だと5,000円前後からあります。
デザインですが、今は乳首でていません
デザインに関して、年配の方は乳首が出ているイメージをお持ちでしょう。
これはローカットタイプと呼ばれていて1996年のアトランタオリンピックまではこのタイプです。
当時の書籍を読むと「吊りパン」と呼ばれています。
2000年のシドニーオリンピックからはハイカットタイプが導入されました。
現在の日本のレスリングのユニフォームは、大体どんな大会でも国際ルールに則って、ハイカットのシングレット一択です。
ただAmazonや楽天で「シングレット」という単語で検索すると、競技用ハイカット以外に、セクシー下着としてのローカットシングレットが販売されています。
ちょっとアレなんで、画像は貼りませんが、興味のある方はどうぞ。
考えてみるとローカットタイプってデザインのバランスも良くありません。何より乳首が見えて恥ずかしいですし、なぜあの形状が長期間続いたのか疑問です。
古代ローマ時代のレスリングは全裸で戦っていたので、それに比べたら不自然な露出も許容範囲だった・・・わけないか(笑)
あとレスリングのルールって世界レスリング連合の偉い人の都合で決まることが多いらしく、役員の寵愛を受けていた胸毛自慢の選手がいたからとか。
すいません。もうこれぐらいにしときますね。
<(_ _)>
色は赤と青
色は赤系と青系があり、相手は必ず自分とは違う色のシングレットを着ています。同色の選手が戦うということはありません。
どちらが何色を着るかは、トーナメントの組み合わせの際の抽選番号で決まります。
数字の小さい方が赤、大きい方が青を着用するルールです。
トーナメント表では
こんな風に表記されるので
上段のAが赤、下段のBが青、ということになります。
そのため選手は常に赤と青の二色のシングレットを持っています。
また赤と青といっても色見本帳のようにこの番号の色でなければダメという厳密な指定があるわけではありません。また赤のみ青のみというわけでもなく多少のデザインを入れることは許されています。
例えば早稲田大学の青のシングレットは濃い紺一色のためスクール水着のようですが、山梨学院大学はライトブルーで白い布地の面積も多いデザインになっています。
また大学のレスリング部では定期的にデザインの変更が行われていますが、公式の試合でも旧デザインを着ている人や新デザインを着ている人が混在しています。
つまり色とデザインに関しては敵と味方さえ分かれば問題なしということなのでしょう。
実は1968年のメキシコオリンピック以前は、選手の両足首に赤か青のテープを巻いていれば、何色のシングレットを着ていても良い、というルールでした。しかしこれでは、観客から見て、どっちが赤でどっちが青か分かりづらいということで、メキシコオリンピックからは、それぞれ赤と青のシングレットを着ることになったようです。(出典:笹原正三「レスリング」)
素材はナイロンとスパンデックス(伸縮性のあるポリウレタン素材)を混ぜてるものが多いです。
大学生の場合、シングレットに大学名は書かれていますが、選手名は書かれていません。そのため通常はスコアボードの表示を頼りに判断するしかありません。でもスコアボードの表示もたまに間違っていることがあるので、やっかい。
柔道の場合は、道着に名前が入っているので、すぐにわかるんですけどね。
青山学院大学レスリング部は名前も入れてました。考えてみると名前を入れてしまうと全部個人の特注になるので、お金がかかちゃうんですよね。
また
Japan Wrestling Federation – 日本レスリング協会公式サイト – JWF
のページ内に着衣規定が載っていたので転記しておきます。
着衣規定
(1)赤・青色についての配分は、70%以上とする。(反対色を使用することは不可とする)
(2)所属名を入れること。(スポンサー名等は不可とする)
(3)背面に氏名を入れることは自由とする。
(4)取付け方法は、シングレットに、直に圧着及び直接刺繍すること。
シングレットの着方
次にシングレットの着方について。
シングレットの着方もなにも、短パン部分に足を通してから、上半身のタンクトップ部分を持ち上げて腕を通して終了ではないか、と思われるでしょう。
確かにその通りなのですが、インターネット上では「シングレット 着方」で検索している人がある程度いるみたいなので、こんな解説してみました。
レスリング会場では、試合が終わった選手が上半身のタンクトップ部分をペロンとたらして、ほぼ短パン状態でたたずんでいる風景が見られます。
ちなみに1978年に出版されたこの本には
シングレットの下にサポーターを付けるのがルールと書かれています。
追記:レスリングシューズの記事も書きました。
レスリングシューズの意外な使い方 | レスリングファン
シングレットのデザインはヘンなのか?
先日(2020/05/12)シングレットを解説しているこのページにアクセスが急に集まったので何事か?と思っていたのですが
一瞬私のブログがブレイクか!と(笑)
どうやらこの記事が原因みたいです。
レスリング“つりパン”廃止論が加熱「昔から違和感」五輪戦士も続々支持(デイリースポーツ) – Yahoo!ニュース
この記事を読んだ方が、「シングレット」って何?ということで検索した結果、私の記事が目に留まったようです。読んでいただきましてありがとうございます。
記事のタイトルでは「つりパン」と呼ばれていますが、前述したように「つりパン=ローカットシングレット」は20年前に国際ルール上すでに廃止されています。
正確には、現在のハイカットシングレットの廃止論と言うべきですね。
国内有名選手がシングレットのデザイン変更を提唱
さてこの議論の発端は、シドニー五輪代表で総合格闘家の宮田和幸選手のツィッターでの発言に、リオデジャネイロ五輪女子48キロ級金メダルの登坂絵莉選手が反応。
宮田選手はローカットとハイカット両方経験した世代です。
男子グレコローマン60キロ級世界王者の文田健一郎選手もこれに反応。
五輪2大会連続出場の高谷惣亮選手も
そもそも昔からシングレットには
違和感しか感じてない笑— sohsuketakatani (@TacklePrince) May 12, 2020
正確に言うと着たくないというよりも、ユニフォームのデザイン変えれば競技人口も増えるんじゃない、という意見が多いようです。
ラッシュガードとは何ぞや
ちなみに宮田選手の提唱したラッシュガードとはなんぞや?ということで調べてみました。
ラッシュガード(Rash Guard)のRashは発疹(皮膚のかぶれ)のことです。
つまりラッシュガードとは、摩耗や日焼けによる発疹から皮膚を保護するための、ぴっちりフィットした服で、サーフィンやカヌーなどのウォータースポーツをする人がインナーに着用することが多いようです。
レスリングは柔道のように相手の着衣をつかむ競技ではないので、ぴっちりフィットして収縮性があれば、機能的には問題なさそうです。
デザインを変えることで競技人口が増えるなら、確かに検討には値しますね。
吉田沙保里選手はセパレートタイプに反対していた?
いや、でも上下分離しているタイプだとなにかの拍子でスパッツの方が脱げてしまわないのでしょうか。何名かのアマレス経験者の方は短パンをつかまれる可能性を指摘しています。
しかし短パンだと審判に見えないところで掴まれる可能性があるのではないか?
故意でなくても足を踏んだり、怪我させたり、などがある!
だから掴まれる可能性は大いにあるよね!?と人気の話から少しずれましたが私の意見は以上です!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!— 井上智裕/Tomohiro INOUE,OLY (@_tomo_inoue_) May 12, 2020
それから日本のユニフォームは国際ルールと同じですから、この動きが世界的に波及しないと、ユニ
フォームを変えるのは難しそうです。
それとも国内大会だけはルールを緩くするか、ですね。
と、思ってたら、こんな記事を発見。
「ポロリしちゃう!」とレスリング女王吉田が大反対 女子の試合着「ビキニ」案をフォールできるか: J-CAST ニュース【全文表示】
実は2015年に、世界レスリング連合から、
「セパレートタイプにしたほうが人気が出るのでは?」という意見が出て、
当時現役だった吉田沙保里選手が
「脱げてしまうかもしれないので、イヤ」
と発言していたという記事です。
結局、セパレートタイプ案は見送られたみたいですね。
アメリカのシングレット事情
では海外ではどうなのか、ということでレスリング強豪国の1つ、アメリカのウィキペディア情報をのぞいてみました。(https://en.wikipedia.org/wiki/Wrestling_singlet)
現在では基本シングレットのようです。しかし大学レスリングでは、1970年頃までは、シングレットは禁止、どうやら上半身裸に短パンだった模様。
またシングレットも露出の程度によって、ハイカット、FILAカット、ローカットの3種類が認められています。
FILAカットは聞き慣れない名称ですが、ハイカットとローカットの中間の露出みたいですね。おそらく現在の世界レスリング連合(UWW)の前身の団体の名称から取られていると思うのですが、2014年に名称変更してますから、この情報少し古いかもしれません。
またローカットは最近アメリカでも使われなくなってきています。国際ルールでは禁止ですからね。
また大学ではdouble(ダブル) もしくは doublet(ダブレット)と呼ばれる上下セパレートタイプのユニフォームも使用されているようです。これはタイトフィットのTシャツとショーツの組み合わせです。
これが最近日本で議論になった「あたらしいレスリングのユニフォーム」に近そうです。
そうなるとユニフォームの名称はシングレットからダブレットと呼ばれるようになるのでしょうか。
アメリカでセパレートタイプが使われているということは、脱げてしまうかも問題はクリアされているんでしょうか。
私の意見
さてこの論争、個人的には、確かに昔のローカットタイプはどうかと思うのですが、今のシングレットのデザインはカッコイイと思うんですけどねぇ。
やっぱり腕と肩とふくらはぎの筋肉は露出させて欲しいですよね。
試合中のここぞってときに、隆起するのがカッコイイので(笑)
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