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伊調選手のパワハラ騒動のその後

レスリングあれこれ
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2018年は、伊調選手をめぐるパワハラ問題がマスコミを賑わせました。
2021年になっても、この問題は決着が着いていません。

純粋に競技としてではなく、こういった内容で世間に注目されることは、レスリングファンとしては不本意なことです。

レスリングのパワハラ告発の経緯

大体この手の話はスキャンダルとして一時的に大騒ぎして、飽きたらほったらかしになるので、その後どうなったかをご存じない方も多いでしょう。

まとめるとこんな感じです。

2018年1月
女子レスリングの名門至学館大学大学レスリング部監督で、日本レスリング協会強化本部長でもある栄和人氏に対する告発状が、内閣府公益認定等委員会に提出される。
内容は栄氏が8年前の2000年から伊調選手に対してパワハラを行っているというもの。
実質的な告発者は伊調選手のコーチを務める田南部力氏。

2018年3月
至学館大学谷岡郁子学長が会見し、栄氏を擁護

2018年4月
第三者委員会の調査報告で、2010年と15年に計4項目のパワハラ行為があったと認定
栄氏が日本レスリング協会強化本部長を辞任。

2018年6月
栄氏が全日本選抜選手権のタイミングで至学館大学大学レスリング部監督に復帰するも3日後に解任

2018年8月
栄氏が至学館大学大学を辞職

2018年9月
栄氏がパワハラ告発者の田南部力氏を名誉棄損で訴える
パワハラ認定箇所は認めるものの、それ以外の部分で名誉毀損に当たる箇所があるとのこと。
女子レスリング、「パワハラ認定」の栄氏が語る:日経ビジネス電子版第三者委員会の調査報告で、2010年と15年に計4項目のパワハラ行為があったと認定

2019年12月 至学館大学レスリング部監督に復帰

2021年5月 栄氏の訴えを東京地裁が棄却。つまり田南部氏の告発に虚偽の内容があったという栄氏の主張が認められなかったということですね。上告したかは今のところ不明。
レスリング栄氏の請求退ける 伊調選手へのパワハラ告発

私の見方

パワハラの告発には伊調選手は関わっていないとされています。とはいえ自分に関することがらで、自分のコーチが告発しているので、当然告発の内容には同意しているでしょう。

谷岡学長会見のミス

谷岡学長の会見は、主張の是非はともかく危機管理上、これはやってはいけないお手本のような会見でした。

某大手企業に勤める私の友人の話では、危機管理の一環として社長が替わる度に、謝罪会見のロールプレイをやっているそうです。話し方はおろかスーツやネクタイのトーンまで指示されるとか。

もちろん谷岡学長は会見で謝罪をするつもりは毛頭なかったでしょう。しかし足を組んだままの姿勢といい、あの話し方といい、マスコミにどういじられるか、という視点がまったくなかったと思います。
諫(いさ)める人はいなかったのかと思いましたが、大学では学長、そして日本レスリング協会の副会長、さらに元参議院議員ときては、もう誰も止められないのでしょう。

あと全日本選抜選手権の最中に、復帰会見(結果的に3日後に解任)させたのは、これも危機管理としては稚拙です。必要以上に注目を浴びて、結果的に炎上の燃料を投下してしまいました。
私も当時現地の駒沢体育館にいて、大会運営に支障はなかったようですが、選手に迷惑を掛けかねない状況だったと思います。

また3日後に解任されるような人物を復帰させた谷岡学長には、任命責任があるはずです。
民間企業などガバナンスが働いている組織ならこの責任は問われてしかるべきですが、何も言われないという状況から、レスリング協会内での彼女の立場をうかがい知ることができます。

またこの年(2018年)の12月の天皇杯で、伊調選手は大逆転勝利をおさめたのですが、この時の表彰者はなんと谷岡学長でした。

会場はドン引き。

レスリング協会の副会長という肩書きを考えると表彰者であるのは当然なのですが、そこは本人が降りないと。
ちょっと神経を疑います。

ニコニコしている谷岡学長と、憮然とした表情の伊調選手が対照的でした。

伊調馨選手はここがすごい! | レスリングファン (wrestle-fan.com)

榮氏のわきの甘さ

6月の栄氏の至学館大学大学レスリング部監督解任に関して
当初全日本選抜選手権の最中に選手の試合を見ないで叙々苑(高級焼肉店)へ、ランチに行っていたことが解任理由として取り上げられました。

それで解任というのは厳しいと思っていたのですが、夜キャバクラに行っていたという報道がありました。
それはこの時期ちょっと・・・。脇が甘過ぎです。

野球や相撲などもそうですがスポーツエリートの中には「社会人としてそれやっちゃダメでしょ」という人がたまにいますよね。栄氏のインタビューなどを見聞すると、根は悪い人ではないという印象です。しかし環境のせいで周りが見えなくなってしまっていたこともあったのでしょう。

レスリングって実は「体育会」的じゃない

この報道でもしかするとレスリング界って、非常に軍隊的というかいわゆる昔の体育会的なノリの世界だと世間に思われたかもしれません。

最後にそれを、否定しておきます。

ちなみに私は学生時代体育会的なものは全く経験したことがありません。しかしたまに大学のレスリング部の練習に見学に行かせてもらうことがあります。

その程度の経験ではありますが少なくとも私の印象では大学のレスリング部って、全然いわゆる旧来の体育会系なイメージ(先輩の言うことは絶対で理不尽ないじめがある)はありません。

レスリングの大会では試合に出ていない時、選手の皆さんは観客席に座っています。

そのため選手同士の会話が耳に入ってきます。(盗み聞きしているわけじゃないんですよ。嫌でも耳に入ってくるんです・・・と言いつつちょっと気にはなっていますが(笑))

その会話から学年の上下を判断するは難しいです。最近選手の名前も覚え出してきたので何年生かというのは私の方でも理解しているのですが、学年に関係なく皆さんすごくフランクに話しています。

ある大学のレスリングのコーチとお話ししたのですが、昔のような理不尽なしごきでは今の選手は絶対ついてこないといいます。

「そんなことをしたら辞めてしまうよ」
とおっしゃっていました。

確かに最近の若い世代はなぜそうするか理由がないと受け入れなさそうですし、そもそも現代スポーツ界全体がそういう流れです。

練習は見ていてハードなんですが、皆さんやらされているというのではなくて自主的にやっているという印象が強いです。

コーチの教え方も罵声飛ばすということはせずに、すごく理詰めで説明します。

レスリングって科学的っていうことを最後に申し上げておきます。

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