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伊調馨選手はここがすごい!

試合レポート

あんなに強さと名声を手に入れたのに伊調馨(いちょうかおり)選手の闘いは哀しい。
試合を見ているといつも胸が苦しくなります。

誰も行ったことのないオリンピック個人競技5連覇の高みを目指すという、孤独を選んだ彼女の心情を想像すると、勝っても負けても辛いのです。

伊調選手の戦績

伊調選手の戦績はもはや生きるレジェンド(伝説)です。

オリンピック

金 2004 アテネ 63kg級
金 2008 北京 63kg級
金 2012 ロンドン 63kg級
金 2016 リオデジャネイロ 58kg級

世界選手権

金 2002 ハルキス 63kg級
金 2003 ニューヨーク 63kg級
金 2005 ブダペスト 63kg級
金 2006 広州 63kg級
金 2007 バクー 63kg級
金 2010 モスクワ 63kg級
金 2011 イスタンブール 63kg級
金 2013 ブダペスト 63kg級
金 2014 タシュケント 58kg級
金 2015 ラスベガス 58kg級

オリンピック全競技を通して同一競技4連覇を果たした女性は伊調選手しかいません。

2016年のモンゴルのプレブドルジ・オルホン選手に負けるまで189連勝でした。おまけにこのプレブドルジ・オルホン選手、2018年にステロイドを使用していたのがドーピング検査で発覚しています。これってさかのぼって伊調選手の勝ちにできないもんですかね。

また2014年からは25戦連続無失点でした。相手にまったくポイントを取らせない、つまり1度のタックルすら成功させなかったということです。ありえない強さです。

2018年天皇杯での川井選手との闘い

この年に栄コーチのパワハラが問題になりました。
練習環境が整わない状況で、さらにマスコミ報道が追い打ちをかけて、練習なんてほとんどできなかったと思うんですよね。

でも何があろうが、そこは伊調選手。
天皇杯決勝まで勝ち上がってきました。

この天皇杯と半年後の明治杯で負けるようなことがあると、オリンピック出場は難しくなります。

とはいえ、私の思い込みかもしれませんが、ちょっと線が細くなった印象です。
その日対戦する川井選手には前日1回戦で負けており、正直観客の多くが川井選手が勝つのではないか、と思っていたのではないでしょうか。

その予想通り、試合は1-2川井選手有利で試合終了まで20秒を切ってしまいました。
ああ、やっぱり伊調選手、無理だったか、と思ったその瞬間。

伊調選手のタックルが川井選手をとらえます。
その瞬間駒沢体育館が地響きのような歓声に包まれました。
普段スポーツを見に行くような習慣はまったくないので、あの歓声には鳥肌が立ちました。

そして3-2のまま試合終了。
伊調選手の大逆転勝利でした。

あんなに手が痛くなるくらいの強い拍手をしたのは生まれて初めてです。

あの執念はいったいどこから生まれてくるのだろう。
もうオリンピック4連覇の記録を打ち立てて歴史に名を残しているのに。
いや、決して諦めないとか執念とかという考え方自体が我々世俗の凡人のものなのかもしれません。
ただ勝ちたいという意志が結晶化した存在、それが伊調馨選手なのでしょう。

 

ただこの勝利に一つケチがつきました。

伊調馨選手を優秀選手に選んだのは当然だと思います。
でも表彰者が、谷岡郁子(たにおかくにこ)至学館大学学長でした・・・

彼女、栄コーチのパワハラ騒動の時に
組織を守るためとはいえ栄コーチ側に立って
「今回の騒動で迷惑している」「伊調馨さんは選手なんですか?」
と発言したことが問題視されました。

表彰者が谷岡郁子ってアナウンスされたときは、会場中ドン引きで静まりかえりました。
偉い人なんだから、本人が辞退するって言わなきゃ。
一方的な仲直りをアピールできるとでも思ったんでしょうか。

伊調馨選手は表彰されるときだけ笑顔がありませんでした。
本当に気の毒です。

2019年明治杯での川井選手との闘い

2019年の決勝も伊調馨選手対川井梨紗子との決勝でした。
これでもし伊調馨選手が優勝すれば世界選手権の出場権を得ることができ、オリンピックへの出場に弾みがつきます。

試合は5-4のまま川井選手有利で残り時間が減っていきます。
ただ半年前の天皇杯を経験した私の中では、「でも伊調馨選手だから」という信念みたいなものがあります。

「なんとかしてくれるはず!」

その願い通りなんと残り時間2.51秒で
伊調馨選手がタックルをしかけました。

しかし・・・ 決まり方が甘く、時間切れのような。
伊調陣営からチャレンジ(ビデオによる再判定)が申請されます。

でも・・・判定は覆らず。
惜しい。
あと0.5秒あったら・・・

しかし残り時間3秒切っても全くあきらめない伊調馨選手。
感動とか私も勇気をもらったとか安っぽい表現はしたくないです。
彼女の孤独を想像すると哀しくなるのです。

これで2大大会のうち、天皇杯は伊調馨選手、明治杯は川井選手という1勝1敗になったので、2週間後のプレーオフで世界選手権出場をかけて戦うことになりました。

埼玉県の和光市総合体育館か・・・
なんでまたそんな遠いところでやるかな・・・・
でもその日空いてるし・・・
と考えているところに、試合は一般公開はされないという情報が。

どうも和光市総合体育館のキャパが足りないのが原因のようです。

2019年プレーオフでの川井選手との闘い

明治杯からたったの2週間後、和光市体育館で伊調選手と川井選手のプレーオフが行われました。

2018年12月の闘いで伊調選手が勝ち、明治杯では川井選手が勝ったことにより、1勝1敗になり、プレーオフの勝者が世界選手権の出場権を得ることになります。
どちらが世界選手権に出ても、おそらく優勝の可能性が高く、優勝すればほぼオリンピック代表確定でしょう。

すごい熱戦でした。
伊調選手、ほとんど逆立ちに近い体勢を取らされたにもかかわらず、相手にポイントを取らせない。
そしてまたもや最後の最後にポイントを奪いました。
一体何なんだろう、伊調選手の何があってもあきらめないメンタル。
結局3-3の同点で試合終了。

しかしレスリングのルールでは、同点の場合大技(ポイントの高い技)を決めていた方が勝ちになるのです。このため川井選手の僅差の勝利となりました。

これで、川井選手が世界選手権で優勝できないということにでもならない限り、伊調選手がオリンピック代表になる可能性はなくなりました。

しかしこの伊調選手と川井選手の三連戦、つねに僅差の試合で、いつもギリギリまで伊調選手が攻めていく。
この姿勢はもう素晴らしいという言葉では表せません。
「自分が弱かったとは思わない。(川井)梨紗子が強かった」という敗戦の弁には、やりきったという気持ちが表れていると思います。

うーん、でも・・・・

勝負にifがないのは分かっていますが、天皇杯と明治杯の試合を見た者としては、やっぱりオリンピックにでてもらいたかったなぁ。

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